東京手描友禅の技法を簡単に紹介。
糊置(のりお)き防染による文様染めのことです。染料がにじむのを防ぐ糸目糊で模様の輪郭線を引くことにより、繊細で色数豊富な図柄を描くことが可能になります。糸目糊はもともと、もち米から作られた澱粉糊でしたが、現在ではゴム糊を使うことが多くなったようです。
本来は手描き・手彩色だった友禅染ですが、明治以後型紙を用いる型友禅が多くなりました。そのため従来の手仕事によるものを「手描友禅」「本友禅」と呼び区別します。
絵画風な模様を華麗に染め出した、日本独特の染め物で、江戸時代の絵師、宮崎友禅斎が始めたといわれます。
京友禅、加賀友禅と区別して、東京で作られる友禅を東京友禅、江戸友禅と呼びます。しかし単に生産地が違うだけではなく、それぞれに特色を持っているのです。
まず、デザインの特色をみてみると、華やか・きらびやかな京友禅に比べ一見渋くて地味ですが、洗練された配色・図案は都会的で粋ということができます。
もうひとつ大きな違いとして制作工程の特色があります。技法自体は京友禅と同じですが、各工程を分業制で行う京友禅に対し、東京友禅では図案から仕上げまでほとんどの工程が作者の一貫作業です。ただし「蒸し」等いくつかの分野だけは専門の業者に出します。
東京友禅に多く見られる技法で、筆や刷毛に染料をつけて直接生地に文様を描き出す「無線友禅」という技法があります。糸目糊の防染をしない友禅染で、地色と柄の境界線、つまり輪郭線がないので水彩画のような表現となり、ほんのり優しい雰囲気に仕上げることが可能です。また、あっさりとシンプルな図案にすれば軽快でしゃれた印象となり、いかにも江戸らしい粋な印象です。素描き友禅、描き上げ友禅とも呼ばれます。
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