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レッスン12 グラスに入った水

 今回は、かなり要望の多かった、「グラスに入った水」というのを取り上げてみます。用意するものは、透明なガラスのコップです。そこに7〜8割ほどに水を入れましょう。水の入れ加減も絵に関わってくるので、適当に入れず、どのくらいが一番美しく見えるかをよく見ながら入れます。

 モチーフをセッティングするときは、背景がごちゃごちゃしていると描きにくいので、白い紙を背景に立てるといいでしょう。また、グラスの下にも白い紙を敷いたほうがいいでしょう。

 透明なものを描くのは難しいですが、結局は「よく観察する」ということしかありません。両目で見ると現象がぶれる場合があるので、観察しにくいときは片目を閉じてみるのもいいでしょう。

 今回、参考作品の制作過程に於いて、数回スキャナーで取り込んでおきました。が、ここで紹介するのはあくまで参考であって、これが必ずしも正解であるとはかぎりません。皆さんがデッサンをするときのヒントになってくればと思います。

1 :

 まず、最初に軽く、かる〜く、画面に垂直な線を描きます。これがグラスの中心線になるのです。また、コップの上の面と底辺になる位置に水平線を引いておきます。

 なにかの課題でかくときに、たまに「定規の使用禁止」ということがありますね。個人的にはいい絵を描くためならなにを使ってもいいとは思うのですが、課題というのは時に理不尽なものです。が、そこであきらめてはいけません。要は定規を使わなければいいのですから。例えば、鉛筆を使わないとデッサンはできないわけですよね。鉛筆も使いようによっては定規になるのです。もうおわかりですね。他にもいくつか垂直線や水平線を描く方法があるかと思います。課題のルールにめげず、いろいろとアタマをひねってみてください。

 垂直線と水平線をひけたら、こんどはそこにあうように、できるだけキレイに楕円を描きます。このときにややパース(遠近感)をつけ、楕円の手前側には膨らみをもたせると良いでしょう。グラスの側面の線も引いておきましょう。

2 :

 次にグラスの立体を作っておきます。グラスの側面にもよく見ると影ができています。また、水には水面から落ちる影ができます。この段階で楕円やグラスのプロポーションのバランスが狂っていたらすぐさま直しましょう。描き進めてから気が付くと大変なことになります。

 立体感がとれたら少しずつ描き進めていきます。ここでいう少しずつとは、決して鉛筆を小刻みに動かすことではありません。むしろ鉛筆を動かすストロークは、やや大きめのほうがいいくらいです。少しずつ鉛筆粉を画面につけていくという意味です。モチーフをよく見ながら、完成図をイメージし、そこへ到達するためににじりよっていく、と言った感じでしょうか。

3 :

 中盤ではグラスの現象を細かく追っていきます。ポイントとなる部分は鉛筆で慎重に、強めに押さえていきます。

 このときにグラスの正面よりも側面、つまり向こう側に回り込んでいく部分の現象を細かく描くことによって、グラスの立体感を強調する事ができます。これはラベルの貼ってあるビンやカンにもいえることで、描きやすい正面ばかりを細かく描いていってもちっとも立体感が強調されてこないことがあります。これは、平面を斜め方向から見ると表面が詰まって見えるということと同じなのです。

細かく描くときは、練りゴムの使い方もポイントです。よく練りながら、練りゴムを尖らせて、細かく光っている部分を丁寧に抜いていきます。

4 :

 おおよその完成図です。終盤では描き込みすぎて全体の立体としてのバランスが崩れたところを、大きく鉛筆を動かして修正します。そうすることによって描き込んだところがつぶれたりしますので、必要に応じてまた細かく描き込んでおきます。

 また、デッサンの途中で汚してしまった白い部分もキレイに消しておきましょう。消した上で絵としてのバランスが崩れたらまたモチーフのほうに手を入れることによって修正します。

 細かいところと大まかなところ、また白い部分と黒い部分のバランスがぴったりキレイに揃ったところでデッサンは完成です。デッサンはやめどきも肝心です。時には筆を置く勇気も必要なのです。

 グラスにもよりますが、こういったものを描くのにだいたい完成まで早くて2時間ほどはかかるでしょう。ゆっくり描く人なら6時間前後かかるかもしれません。細部をよく見て、それでいて描きすぎないように、絵として画面としての完成度を高めていってください。


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