今までのレッスンを見て、「文章だけでなく、段階を踏んで実際に描いているところの写真を載せて欲しい」というご意見が寄せられました。また、「人間の顔をうまく描く方法なんかを取り上げていただけたら幸いです」というご要望もありましたので、今回は自画像に取り組んでみましょう。
自画像を描く場合は、当然ですが鏡を用意しましょう。鏡は手鏡ではなく、できるだけ大きいものの方がいいでしょう。鏡台があれば、その前に座ってデッサンをすれば良いでしょう。
自画像に限らず、人間の顔を描くときは、常に同じ方向、同じ表情をしていないことに気を付けなければなりません。いきなり手を動かさず、最初にじっくりと観察してイメージを捉えてみましょう。描くときに全く鏡を見たとおりに描こうとすると、鏡を見る角度はその都度変わってしまうので、上手く描き進められなくなってしまいます。もちろん、できるだけ同じ角度で鏡を見る必要もありますが、全体感やバランスはデッサンした画面の上で合わせていかなければなりません。
下に紹介するデッサンの手順は単なる一例に過ぎず、なにもこの通りに描かなければいけないというわけではありません。「どういう手順で描いていけばいいのか、さっぱり見当もつかない。」という方や、「どうも今まで教えられた描き方ではしっくりこない。」という方などに、参考にしていただけたらいいと思います。
今回使用した道具は、
だけです。その他の道具は一切使っていません。基本的にはそれだけあれば充分です。もちろんこのレッスンを書くために、三脚とビデオカメラは使っていますが・・・(^^;)
1:
まず、画面におおまかなアタリをつけます。この段階では構図が重要なので、それほど形を正確に取る必要はありません。むしろあまり線にこだわらずに画面にデッサンをどう配置していくかをイメージしながら描きましょう。この時に鉛筆に力をかけてはいけません。紙の目が潰れてしまいます。画面を鉛筆でなでるようにします。線が気に入らないときは、まず正しい線を引いてから、間違っていた線を消すようにします。そうすれば、気に入らない線を引いたのも、ムダにはなりません。
大まかなアタリがついたら、頭のてっぺん・目の中心・鼻の下向き面・口・アゴのバランスを見ながらそれぞれの位置を決めていきます。ここで位置のバランスが狂ったまま描き進めるとあとで大変苦労しますので、慎重に合わせていきましょう。
2:
縦のバランスがついたら、今度は横のバランスを取ります。ここでは顔を面としてとらえ、面の方向に沿って鉛筆で色を付けています。目・鼻・口の大きさを、バランスを見ながら合わせていきます。写真のように口元をやや強めに押さえると表情が出しやすく、顔全体がしまって見えるようです。ただし、この段階ではまだ細かく描き込んでしまってはいけません。全体のバランスが狂っていても、この段階ならまだ直すことが可能なので、時々画面から離れて見て、おかしいと思ったところを丁寧に修正していきます。
首の部分は頭部の影が落ちるので、全体的に顔の部分より暗くなります。やはり立体を意識しながら、面の方向に沿って影をつけておきます。
3 :
これは、目のくぼんだ部分につけた色が画面から浮いていたため、親指で押さえつけているところです。こすっているわけではありません。ポンポンと指で押さえつけることで、奥まった色を出すことができるのです。当然、指は鉛筆の粉で汚れますが、親指以外の4本の指で練りゴムを握っているので、時々親指の腹を練りゴムにこすりつけて、必要以上に画面を汚さないようにしています。
あまり早い段階に指で画面をこすってしまうと、紙の目が潰れて取り返しのつかないことになってしまうこともあるので、紙の目をつぶすようなコスリは中盤以降に入れていった方がいいでしょう。
4 :
プライバシー写真などで顔を知られたくない場合には目だけ隠すことからわかるように、人物を描く場合は目がかなり重要です。目が似てくると顔全体が似てくるのです。人の顔を描くときに、印象が似ていないと描いていてつまらないものです。全体とのバランスと位置関係が合ってきたら、目をある程度細かく描いていきます。ただ、あまり細かく描き進んでいると、部分的なものの捉え方になってしまいがちですので、ときどき全体とのバランスを見ながら細かく書いたところをつぶします。
写真は、細かく書きすぎた右目に、眉の部分から落ちる影をのせて、全体のバランスを合わせているところです。このあとまた、練りゴムで形をおこしながら細かく描き込んでいくのです。「描いてつぶして」という行為を何度か繰り返すことによって、絵に厚みが増していきます。
5 :
う〜む・・・。タブレットでPhotoShopに直接描き込んだので、あまりきちんと描けていないのですが・・・。
少々観念的ではありますが、左のように描くと上手く見えると思います。こんな「上手く見える方法」なんていうことを記すのは、独創性を妨げるのであまり良くないことかもしれませんが、どうしても上手く描けない人はこの通りに描いてみてキッカケをつかんでみるのも良いかと思います。ただし、自分なりに観察して描くのが基本であるということを忘れずに!
ここまで速くて1時間はかかると思います。場合によっては3〜4時間かかるでしょう。今回はひとまずここまでにしておいて、次回は中盤以降の手の動かし方と仕上げについてを取りあげようと思います。